2015年1月25日日曜日

サラリーマンが事業主になったら?

 会社の給与が絶対的な安全といえない昨今、副業を持つのは賢い方法です。アフィリエイトやクラウドソーシングなど、インターネットを利用した副業なら自宅でもできますし、株やFX、不動産投資などの方法で副収入を得る人も増えています。

 しかし、収入が増えたらその分「税金」を支払わなければならないのです。


事業主の節税効果


自営業者はサラリーマンに比べて様々な節税方法があります。事業がうまくいって、少し儲かった場合、必要経費を増やして税金を抑えることが可能です。家賃、パソコンなどの購入費、通信費、研究費、交際費、光熱費、ガソリン代など、様々な費用が経費となります。

 では、サラリーマンでも事業を始めて、自分で必要経費を増やして、税金を調整をすることができるのでしょうか。

 理屈の上からはできそうです。事業者になれば、給与から控除されている税金も取り戻すことができます。副業はインターネットですぐに始められますが、それを事業として申告すれば良いのです。副業で赤字が出た場合、その赤字を給与で得た所得と差し引きできます。

 しかし、このような方法は、おススメしません。


経営コンサルタントの逮捕


2013年2月、上記の手法を指南していた34歳のコンサルタントの男性が、所得税法違反で逮捕されました。確定申告がスタートする直前の2月15日。

 コンサルティング業務として、顧客のサラリーマン数十人に脱税指南をしていた被疑事実です。

 手口は単純で、サラリーマンに架空の副業で赤字が出たように申告させ、それによって正規の本業の所得を圧縮し、すでに納めた所得税を還付させるというものでした。彼はこの方法を「コンサル」することで、顧客一人から年額7万から8万円の「手数料」を得ていました。

 顧客の業種や得意分野に合わせて、次のように副業の職種を変えていました。

  • スポーツインストラクター
  • グラフィックデザイナー
  • 塾講師など
そして、自宅マンションの家賃や携帯電話代、自家用車の減価償却費などをすべて経費として計上し、副業を赤字にして、本業の給与所得と損益通算するという手口でした。



 そして、次のように説明し顧客を安心させていました。

 ・・・副業で出た赤字を本業の給与所得によって相殺すると、払い過ぎた所得税を還付してもらえます。税金の還付申告者は年に1200万人(日本の労働力人口の5分の1)を超えます。税務署が膨大な申告書類から不正を見抜くのは容易ではありません。・・・

 発覚のきっかけは、税務署が、彼の確定申告の「手数料」を誰から得たかを調べるうちに、副業で赤字を出して還付申請している人間ばかりだと分かったそうです。

 このコンサルタントにノウハウを教わり独立して、ノウハウを指南していた男性(29歳)も約3600万円の脱税指南容疑で在宅起訴されました。

 書籍には「事業者になれば、給料から天引きされている税金も取り戻せます。」と記載されています。ところが、それを指南したコンサルタントが逮捕されたこの事件。税務署は忙しいからと高をくくっていたら、思わぬところから捜査の手が伸び、今回のように逮捕に至ることを、ゆめゆめ忘れてはならないのです。

 サラリーマンが副業し、その収入や損失を事業所得として申告することは認められています。  しかし、架空の経費や控除を計上したり、事業を全く行っていないといった実態のない事業の損失を申告し、税の還付を受けるのは、違法であり、摘発対象です。

 個人事業主になるには収益が「継続・安定的に発生」する必要があります。そして、そもそも何年も赤字の「事業」は、「事業」として成り立っていません。

  個人の事業所得の赤字と、給与所得との損益通算は、副業しながら事業の拡大を目指す方・将来の独立を目指す方にはとてもありがたいものです。 当初は赤字申告でも、事業を継続することで節税以上の利益を生み出すことも可能ですから、適正な申告を心掛けるようにしてください。