2015年1月18日日曜日

米国親会社株式(RSU)の申告(2015年度)

 今回は、米国親会社の株式(RSU)の確定申告についてまとめました。

 まず、基本的な概念を押さえましょう。

 従業員がインセンティブとして株式関連の報奨を得る際、その方式としては、以下の三つのパターンがあります。


  • ストックオプション (Stock Option) = 従業員が自社の株を「定められた価格」で「定められた期間内」で購入できる権利。 
  • ESPP (Emproyee Stock Pruchase Plan) = 社員持ち株制度の事。通常より割引で自社株を買える。 
  • RSU (Restricted Stock Unit) = 制限譲渡付きの自社株取得権。ストックオプションの一種でボーナスの一部として支給されるものです。RSUは株式を付与されてもすぐに売却することができず、通常は、1年ごとに4分の1(又は3分の1)ずつ売却する権利を得ていくことに特徴があります。この売却する権利を得ることを「Vest」といいます。売却する前にRSUにをくれた会社を退社すると売却できないことも多いみたいです(会社によります)。


 平成24年度税制改正で、日本法人の役員が、海外親会社から、その株式やストックオプションの権利を与えられた場合、日本法人はその経済的利益の供与に関する調書を、翌年3月31日までに税務署に提出することを義務づけられました(所得税法第288条の3の2、平成24年度改正法附則第56条)。これは、外資系に勤める日本人の相次ぐストックオプションの無申告、申告漏れが原因で逮捕者まで出たためです。

 米国金融機関にて米国親会社株式が管理されている場合、どのように確定申告をしたらよいでしょうか。

RSU(譲渡制限付株式)の課税関係

Vestされた株式の時価相当額を給与所得として申告します。

付与時(Grant)      課税なし
権利行使可能時(Vest) 権利行使可能株数×株価を給与所得として課税

※ 給与所得を算定する際の為替はVest時のTTMを採用
※ Vest後に配当(Dividend)がある場合、通常、上場株式等の配当として分離課税
※ 配当をReinvestmentしている場合も申告は必要
※ Vest後に株式売却益(Capital gain)がある場合、通常、株式等の譲渡(未公開分)として分離課税
※ Vestした株式の年末時点の時価が5,000万円を超える場合は、国外財産調書の提出が必要(平成25年12月末以降)

  RSUは売却する権利を得た時は「給与所得」として、実際に売却した時は「譲渡所得」として申告する必要があります。

 通常は、所属企業が年末になって税金の計算した紙を渡してくれますが、こちらに書いてある「給与所得」部分にあたります。 企業から株をもらった/買った時には、この給与所得に加算して計算をしなければいけません。しかし、米国親会社株式については、勤務先の日本の子会社が出してくれる源泉徴収票には含まれていません。そのため、この部分について確定申告が必要となります。


 日本での米国株式の配当や売却益の税金申告は、米国で課された税金を日本の税金から控除するため外国税額控除の適用があること、日米租税条約で特別な扱いが定められていること、国内株式に認められる特例が認められないことなどから、国内株式と異なる取扱いとなっています。

 また、ストック・オプションやRSUの付与により米国親会社株式を取得した場合、米国親会社が利用する海外の金融機関で株式が管理されることが多いようです。この場合、国内金融機関を利用して外国株式の配当を受け取る場合や外国株式を売却する場合と異なる取扱いとなるためさらに注意が必要です。

 申告に使用する為替レート ・・・  米国企業のRSUは通常米国の証券会社で付与と売却が行われますので、通貨は当然USDです。日本で確定申告を行う場合は、時価をそれぞれのイベントが発生した日の為替レートでJPYに変換して申告します。


① 米国株式の配当

 米国株式の配当は、日本では源泉徴収されず、米国において源泉徴収されるのみです。米国非居住者の源泉徴収税率は30%ですが、日米租税条約の適用を受ける届出書(Form W-8BEN)を提出している場合は、日米租税条約により源泉徴収税率は10%となります。

 通常、米国親会社は上場企業ですので、この場合、日本では申告分離課税として申告することが認められています。また、他の上場株式(国内の金融機関を利用したもの)との譲渡損失と損益通算することができます。なお、外国税額控除の適用は認められますが、配当控除は認められていません。

 米国親会社からの配当が無いものと認識していても、配当を米国親会社株式の取得に投資するプログラムになっている可能性もあります。この場合、確定申告が必要です。

② 米国株式の売却益

 米国株式の売却益に対する米国非居住者の源泉徴収税率は30%ですが、Form W-8BENを提出している場合は、日米租税条約により米国株式の売却益への課税は免除されます。

 日本では申告分離課税として申告し、20.315%(所得税15.315%・住民税3%)の課税となります。なお、上場株式の特例である上場株式配当との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除は認められていません

③ 外国税額控除

 米国株式からの配当や売却益に対して米国で課税された場合、日本で確定申告を行うことで、日本の所得税額から米国での所得税額(源泉徴収税額)を控除することができます。

 所得税額から控除しきれない場合は、復興特別所得税、道府県民税、市町村民税の順に各控除限度額まで控除することができます。また、その年に控除し切れなかった外国税額控除は、翌年以降3年間の繰越利用が認められています。

 なお、米国にて、日米租税条約で定められた限度税率を超える税率で所得税が課された場合でも、外国税額控除として認められるのは限度税率により決定された米国所得税額(源泉徴収税額)のみとなります。この場合、IRS(米国の税務当局)に請求を行うことで、過大に課された米国所得税額の還付を受けることができます。

 例えば、米国株式の配当を得た場合、Form W-8BENを提出していないときは、米国株式の配当に対して30%の源泉徴収をされることがあります。この場合、日本の確定申告では、日米租税条約で決定された米国所得税が10%であるため、外国税額控除の適用は10%分しか受けることができません。過大に課された米国所得税額は、Form 1040NRで申告して初めて、還付を受けることができます。

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2017年3月追記:上記は2015年1月時点の情報に基づく記事です。2016年度分の確定申告について、米国親会社株式(RSU)の申告 2016年度という記事をアップしました。