きっかけとなった金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書は、公的年金を補うため、早い時期から自助努力での資産形成を促すことが本来の趣旨でした。
今回の話で、「国の責任放棄だ」「年金がもらえないのか」といった批判がありますが、それらはおおむね間違いです。なぜなら、公的年金はまず破綻しないからです。今回の報告書もそうした指摘をしたものではありません。給付水準は引き下げられますが、それによりむしろ破綻リスクは回避されます。また平均寿命の延びを勘案すれば「毎月もらう分が減っても、長く受け取る」ことになるので、そうそう不利益な話ばかりではありません。
実際、世の中にはもっと少ない資金で生活している人もたくさんいます。でも、それだけでは旅行に行ったり、趣味にお金を使ったりという楽しいことはなかなかできません。私たちは老後に食事をする余裕もなくなるから2000万円をためるのではありません。むしろ、映画を見たり、美術展に出かけたり、時々旅行に出かけたり、孫にプレゼントをするような「生きがい」や「ゆとり」のために2000万円を使うのです。
2000万円が妥当かどうかは別にして「働いて稼ぐなり、若いときから蓄えを持つべく国民自身の努力も重要だ」ということを述べているように思えます。
被服費は節約
シンガポールの準富裕層(金融資産3000万円以上)の女性たちは、皆まじめで、流行のファッションを身にまとうような派手なタイプは少ないです。お金を貯めている人は「いつも同じ服を着ている」印象です。今はマーケットが不安定なので株式投資などはせずに、国の老後制度や預貯金、養老保険を中心に老後設計をしているそうです。
日本の20代~30代の女性の場合、被服費や美容費に月数万円以上かけている人が普通です。まれに、両方で月2000円といった人もいますが、40代になると数万円で収まらない人も出てきます。
公共の交通機関で移動する
女性たちは、ワインを飲んだりしてもタクシーは使わず、バスを乗り継いで帰ります。シンガポールではタクシー代が非常に安く、加えて国土も狭いです。10分程度の距離ならタクシーで数百円で自宅に帰ることができるのに、30分以上かけて公共の交通機関と徒歩で帰ります。
つみたてNISA(少額投資非課税制度)、確定拠出年金(DC)の活用
報告書が一例として示した不足額2000万円を資産運用で作るには、様々な税優遇制度の特徴を理解し、併用することが重要です。
老後資金作りのためには、確定拠出年金(DC)を活用し、さらに少額投資非課税制度(NISA)を併用するのが重要です。NISAとイデコは併用可能です。
企業年金のない会社員であれば、イデコで年間27万6000円、つみたてNISAで40万円と合計年67万6000円を投資できます。これを20年間積み立てれば、累計投資額は1352万円。年率3%で運用できたら、運用成果と税負担減の効果を合わせると金額は約2000万円になります。
個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)
確定拠出年金(DC)は運用成績しだいで将来の受取額が変わるものです。個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)と企業型があり、ともに運用時に非課税で増やせます。
イデコはさらに掛け金が全額、所得税・住民税の対象から外れ、税金が減る利点があります。会社員の場合、最高年27万6000円(他に企業年金がない場合)を掛けられ、税率2割の人なら節税額は年5万5200円になります。
現状、企業型DCの導入企業に勤める人は、規約で認める少数の場合などを除きイデコは利用できません。が、厚生労働省は併用を可能にする検討に入ったそうです。来年の通常国会に改正法案が出される可能性があります。
企業型は掛け金も口座管理費も会社が原則負担してくれるのでイデコより不利なわけではありません。しかし、掛け金が少なかったり高コストの投資信託しか選べなかったりすることもあります。
イデコの活用術
- 掛け金はなるべく多く拠出。必ず上限まで使わなければならないわけではないが、掛け金の枠をできるだけ多く使う方が節税効果を高められる。
- 口座管理料が低い金融機関を選びたい。
- 投信選びに特段の自信がない場合は低コストのインデックス投信を選ぶのが無難だ。
- 運用時に非課税で増やせるという利点を生かすためにも、せっかくなら長期で増える株式投信を選びたい。
- イデコは原則60歳になるまで引き出せない。教育資金や住宅資金など途中で使うお金はNISAや普通の預金口座の預貯金で対応すべきだ。
NISA
NISAには、年間上限額120万円・非課税期間5年の一般NISAと、同40万円・同20年のつみたてNISAがあります。同じ年には併用できずどちらかを選びます。